止幾の和歌と俳句 黒澤止幾(とき) 日本初の女性教師

止幾の和歌俳句

黒澤止幾が文学に志して、初めて俳諧を学び、狂歌を修め、さらに漢詩にまで手を染めたのであったが、同郷の志士、加藤木賞三から勧められて和歌に転向したのは、1847年〜48年ごろであった。

既に、俳句から狂歌に入り素地のあるところへ和歌を始めたので、上達も早かった。
10年程で相当の自身もついて、斉昭の雪冤運動で上京した際の『京都紀行』にも30余りの和歌を書き記している。しかも、献上の長歌をもってその志を達したのである。
すなわち、止幾は、主君のため国のために微力ながら尽くそうとする一片の真心を盛る器として和歌を活用したのである。献上の長歌は、止幾が渾身(こんしん)の力を尽くして綴った勤皇の真心の結晶である。

ここから、止幾の短歌と俳句を概観するために、紹介したい。
次の記事を見てもらいたい。
posted by TOKI at 19:18 | Comment(1) | TrackBack(0) | 止幾の和歌と俳句

止幾の短歌

述懐
老が身は朽木となれど残る名は
末の世までの鏡とも見よ

夏虫
露ふかき埴生の庭の草木まで
たまの光りい照らす夏虫


音もせぬ雨に契りて朝みどり
風にまかする青柳の糸

梅薫枕
垣こしに隣の花をさそい来て
まくらにかおる風の梅が香

梅留袖
ぬばたまのやみはあやなし梅の花
そこともわかず袖にかおれる

山家の春月
人問わぬ山里いかにまだ宵の
つきはおぼろにかすむ春にも

名所の花
草枕かりねゆかしき有明の
月夜よし野の花の夕ばえ
ふみわけていさ見にゆかんよしの山
道もなきまで花の白雪

社頭鶯
千はやぶる神の御山のうぐいすは
こえもたかまが原にこそ鳴け

暮春鶯
あし引きの山路に今日は打ちむれて
うぐいすきかん春の名残りに

関路時鳥
越ゆるとも誰かとがめん関の戸を
明方近き山ほととぎす
ほととぎすまだ明けやらぬ関の戸を
名乗りて過る夜半の一こえ

夕草の花
菊の葉に置くちょう露の数見えて
花にひとしき夕月の照る

朝の川霧
朝なけに梶とりあえず引船の
つな手をつつむ淀の川ぎり
秋風起白雲飛草木黄落雁南帰
秋風に峯のしら雲飛び超えて
もみぢ散る頃渡るかりがね

五月雨
草深くむすぶいおりのさみだれは
とももあらしの山のふもとに
かりそめにむすぶいおりの草の戸に
きのうに今日とつづく五月雨

五月雨晴
五月雨にみだれし雲の飛びきえて
あおらに涼しくすめる月かげ

竹雀
己が住む松に千鳥を古池の
みぎわに遊ぶひな鶴の声

名所の蛍
夜はもえてひるは竹葉に身をひそみ
つれなくこがす蛍火のかげ

御祓
みそぎして心もきよくならの里
小川の水もすみ渡るらん

袋田の四季
春雨にくだけて落る袋田の
たきの鶯音たててなく
ほととぎす鳴音をそえて袋田の
谷のとぼそにひびく瀧つせ
つつらがた綿の帯と見はやさん
紅葉照りそう袋田の瀧
袋田の瀧の白糸しらしらと
しらけてこおる冬の夜の月

寄水恋
独り住む心もきよき山の井の
ふかきおもいを汲みてこそ知れ

鶴契千年
君が代の千代の栄えを仰ぎつる
まつに契りの深き心は

初紅葉
つゆ霜に深く染ても小倉山
御幸まつまの紅葉やさしき

獄中作
とこしえに向う鏡のなかりせば
我かげにだにあわぬくるしさ
posted by TOKI at 18:18 | Comment(3) | TrackBack(0) | 止幾の和歌と俳句

錫高野八景 短歌

大高峯の朝照
春立てば谷の深雪もとけぬらん
たやなの峯を照らす朝日に
朝なけに我うらやすを登る日に
光り照りそう大高の峯

三枝祗の森
三枝の神のしづめし御社は
いく代ふるともすず高野森
三枝の神の立てたる森なれや
ちよもさかえて茂ることのは

梅ヶ沢の鶯
名にめでて春の眺めの梅が沢に
すむうぐいすのなく音うるわし
実に梅ヶ沢より春や立つらんと
おもいききつるうぐいすのこえ

如意山の糸垂桜
見る人もあわれと思え糸桜
むすぶみのりの庵はたえにき

盥が峯の秋月
ゆあみするたらいが峯の秋の夜の
月の鏡はさやけかるらし

瀧山の晴嵐
瀧山のあらしの音も朝よいに
なれてききぬる里ぞ住みよし

金二星峯の鹿の声
あいおいに松もさかゆる二た峯に
千代もとちぎる鹿のつまごい

金河原の砂錫
石の上にふりにし野辺の金河原は
すずの名高き里とこそきけ
高野なる真金河原の名にめでて
砂錫多き里ぞありける
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止幾の俳句

帰り花
名にめでてゆかし桜の帰り花
帰り花ならぶ日和に忘れ咲
帰り花見付けてうれし冬の旅
帰り花咲くや日向の麓寺
一人来ぬ庭や一輪帰り花

水仙
年ましにふえるや庭の水仙花
きわきわと白し垣根の水仙花
水仙や見る人もなき草のいお
山かすの垣根もゆかし水仙花
茶にまねく客の馳走や水仙花
水仙の花に程よき日和かな
水仙や朝茶の匂う寺の庭

水鳥
水鳥の立つやしきりに浪のゆれ
水鳥のくぐる波間や日の光
水鳥のよるや汀の捨て小舟
水鳥の濡れ羽に光る月夜かな

おし鳥
江の上に浮かぶやおしおの番鳥
むつまじや浪間におしのつがい鳥
おし鳥や岸行く舟の朝けぶり
おし鳥の波を枕の浮寝かな
明る夜を猶おし鳥のおもいかな

足袋
暮ぎわに足袋の紐とく宿りかな
足袋洗う川に水汲む舟子かな
足袋ぬいて越ゆるもつらき小川かな
霜とけて足袋のしめるや薄草履
釣竿にかけて戻るや洗足袋

巨燵
旅宿の巨燵につのるはなしかな
長き夜を咄しに更かすこたつかな
夜もすがら咄しのつきぬこたつかな
ひとりしてねむけのつくや置ごたつ


炭負うた人に道問う山家かな
大名のそばにほこるや桜炭

冬の月
ものすごき風の光るや冬の月
夜まわりの影あわれなり冬の月
苫舟の音も静かに冬の月
posted by TOKI at 16:18 | Comment(0) | TrackBack(0) | 止幾の和歌と俳句
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